首の痛み
頸椎症性神経根症
症状(Symptoms)
頸椎の加齢性変化(骨棘の形成や椎間板の突出)によって、脊髄から枝分かれした「神経根」が圧迫・刺激されることで起こります。
基本的には片側性(片方の腕や手)に症状が現れるのが特徴です。
- 疼痛・しびれ:首から肩、腕、指先にかけての鋭い痛みやしびれ。
- 放散痛:首を後ろに倒したり、患側(痛む方)に傾けたりすると痛みが強まります。
- 感覚障害:圧迫された神経根の支配領域(デルマトーム)に一致した感覚鈍麻。
- 筋力低下:握力の低下や、腕が上がりにくくなるなどの運動麻痺(進行した場合)。
- 随伴症状:肩こりや、後頭部の痛み、肩甲骨周囲の痛み。
診断(Diagnosis)
診断は臨床症状と画像検査を照らし合わせて総合的に行われます。
- 身体所見(誘発テスト)
- ジャクソンテスト (Jackson test):頭部を後屈させ、下方に圧迫して痛みが誘発されるか確認。
- スパーリングテスト (Spurling test):頭部を患側後方に傾け、下方に圧迫して放散痛が出るか確認。
- 画像検査
- X線(レントゲン):椎間腔の狭小化や骨棘(ほねのトゲ)の有無を評価。
- MRI:神経根の圧迫部位を特定するための最も有力な検査。軟部組織(椎間板)の状況も把握可能。
- CT:骨性の圧迫(骨棘)を詳細に確認する場合に使用。
- 鑑別診断:胸郭出口症候群、肩関節疾患(腱板断裂など)、末梢神経障害(手根管症候群など)との切り分けが重要です。
治療(Treatment)
ガイドラインでは、原則として保存療法が第一選択とされています。
多くの症例(約80〜90%)は数ヶ月以内に自然軽快する傾向があります。
保存療法(Conservative Management)
- 安静・装具療法:頸椎カラーを用いて首の動きを制限し、神経根の刺激を抑える(短期間の使用が推奨)。
- 薬物療法
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- 神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリンなど) ビタミンB12製剤
- リハビリテーション
- ブロック療法:神経根ブロック。痛みが非常に強い場合に、診断的治療を兼ねて行われることがあります。
スマホの使用やデスクワーク、下を向いて長時間作業する習慣のある方が多く、日常生活の過ごし方に改善のヒントがある場合が多いです。
これらの習慣の方は身体の柔軟性や姿勢を適切に保持する筋力・使い方が難しい場合が多く、運動療法と日常生活指導が重要になります。
運動療法
- HFP(Head Forward Posture)の修正。
- 頸椎運動時の制限部位の特定と可動域訓練。
- 腕を使う際の頸部・肩甲骨・肩関節の運動の評価と動作の修正。
- 体幹(胸郭・胸腰椎・骨盤)の柔軟性と運動。
日常生活指導
- 仕事中の姿勢の確認。(デスク環境・車運転時の姿勢)
- 自宅での姿勢確認と修正。
自主トレーニング指導
- 頸部の伸筋(後頭部の筋)・屈筋(頸部の前面の筋)のトレーニング
- 運動軸を意識した屈曲・伸展の練習
- 肩甲骨・胸郭のストレッチ
手術療法(Surgical Treatment)
保存療法を3ヶ月程度継続しても改善せず、以下のような場合に検討されます。
- 適応:耐えがたい激痛が続く。
- 筋力の低下が著しく、日常生活に支障がある。
- 前方除圧固定術:首の前からアプローチし、原因となる椎間板や骨棘を除去して固定。
- 後方除圧術(椎間孔拡大術):首の後ろからアプローチし、神経の出口(椎間孔)を広げる。近年は内視鏡や顕微鏡を用いた低侵襲な手術も普及しています。
足・足関節の痛み
足関節外側靭帯損傷(Ankle Lateral Ligament Injury)
症状(Symptoms)
足首を内側に捻る(内がえし)ことで、外側の靭帯(主に前距腓靭帯)が引き伸ばされ、損傷します。
- 疼痛:外くるぶし(外果)の前方や下方に鋭い痛みが生じます。
- 腫脹(はれ):受傷直後から外くるぶし周辺が大きく腫れ、皮下出血(青あざ)が見られることもあります。
- 圧痛:損傷した靭帯の部位を指で押すと強い痛みがあります。
- 歩行困難:荷重をかけると痛みが増強し、重症度によっては足を地面につけられなくなります。
- 不安定感:重症(完全断裂)の場合、関節がグラグラする感覚(関節の弛緩性)を自覚することがあります。
足関節外側側副靭帯損傷(足関節捻挫)は再発率が高く、痛みが改善した後も不安定感や運動時の違和感が残存するケースが多いです。多くの場合は筋力低下と筋の反応遅延・足首の硬さが原因です。
当院では正確な診断とリハビリによる機能評価とトレーニングによって足首の状態を違和感がない状態まで「上げ切る」ことが重要だと考えています。
診断(Diagnosis)
受傷機転の確認と身体所見、画像検査を組み合わせて損傷の程度(グレード)を判定します。
- 身体所見(徒手検査)
- 前方引き出しテスト (Anterior Drawer Test): 脛骨を押さえ、踵を前方に引き出して、ズレや「緩み」がないかを確認(前距腓靭帯の損傷を評価)。
- 内がえしストレス試験:足首を内側に捻り、関節の開き具合を確認。
- 画像検査
- X線(レントゲン):骨折(外果骨折や剥離骨折)の有無を確認するために必須です。
- エコー(超音波):靭帯の連続性の断裂や血腫をリアルタイムで確認できます。
- MRI:靭帯の損傷程度だけでなく、軟骨損傷や骨挫傷などの合併損傷を詳しく調べるのに有効です。
- 重症度分類
I度:靭帯の微細損傷(伸び)。腫れや痛みは軽度。
II度:靭帯の部分断裂。強い痛みと腫れ。
III度:靭帯の完全断裂。関節の不安定性が見られる。
治療(Treatment)
以前は長期間の固定が行われていましたが、現在は「早期運動療法」が推奨されています。
急性期処置(RICEからPOLICEへ)
従来は RICE(安静・冷却・圧迫・挙上) が基本でしたが、最近のガイドラインでは過度な冷却や安静を避け、適切な負荷をかける方向へシフトしています。
保存療法
I度・II度ではサポーターやテーピング、III度では短期間(1〜2週間程度)のギブス固定や装具を用いることがあります。
リハビリテーション
捻挫後は疼痛が改善した後も、足関節の硬さ・筋力低下・筋の反応遅延が残存し、これらがいわゆる「捻挫癖」につながります。
複数回の捻挫を受傷することで、動作時の足首の不安定感を自覚するとCAI(慢性足関節不安定症)に移行し、将来的に変形性足関節症になる場合もあります。
当院のリハビリテーションでは捻挫の機能障害を
- 構造的不安定性(足部の硬さ・足首の硬さ・靭帯のテンションなど)
- 機能的不安定性(ふくらはぎの筋力レベル・腓骨筋の反応スピード・不安定下でのバランス能力)
- 患部外筋力・コントロール(股関節による運動コントロール)
の3要素に分けて治療し、パフォーマンスの改善および再発予防に取り組みます。
手術療法
多くは保存療法で治癒しますが、以下の場合に検討されます。
- 適応:スポーツ選手などで早期復帰を望む場合。
- 保存療法を行っても慢性的な不安定症が残り、捻挫を繰り返す場合。
- 術式:靭帯縫合術(直接縫い合わせる)や靭帯再建術(他の腱を移植する)が行われます。
